人事評価が必要なくなる時代が来る? [品川トピックス]

「考課者(上司)は、私のどの接客応対をもって『親切・丁寧に行なえている。』と判断するのか。また、その基準は何か。」
仕事柄、クライアント企業の人事評価制度の構築を受注し、制度設計完了後に従業員に対して、その説明を行うとこのような質問を受けることがあります。

「接客応対」に限らず、評価を行う上で様々な「考課項目」があり、考課者は被考課者(部下)の業務上のエピソードを見て、その「考課項目」において優秀な他の被考課者の内容や、これまでの考課者の経験、知識を基準として評価レベルを判断します。
考課される側から見れば、自分の評価が低ければ「どの行動を見て、このレベルと判断したんだろうか。もっと評価してくれてもいいはずだ。あの上司は、ほとんど私の業務を見ていないはずなのに、こんな評価は不当だ。」と不満をもってしまうことは確かにありがちなのですが。

こういった評価に対する不満をできるだけ解消するために、人事評価制度を設計する上で重要になってくるのが「評価の納得性」と言われるものです。
「評価の納得性」を向上するために行っているのが、考課者と被考課者との期初、期中、期末の面談実施の徹底や、考課者訓練などになります。しかし、これも「納得を得る」という点では正直、限界を感じます。

そもそも日本の企業の多くは「職能給」を中心とした賃金制度を用いています。「終身雇用」「年功序列」の日本独特の雇用制度においては、「職能給(職務の結果ではなく、この仕事を遂行する能力があるという期待としての給与)」を選択することで、若い世代は職務の貢献度に直接給与連動せず支給額を低く抑え、職務の貢献度に関係なく勤続年数を重ねるごとに給与が増えていく仕組みにすることで、労働者の会社に対する忠誠心や他社へ流出しないようにしているわけです。
従って、「職務を遂行する能力」を量るために、「職能給」の企業では人事評価制度が不可欠になります。

一方、欧米では「雇用の流動化」が進んでいるため、給与は「職務給」が中心となります。「職務給」の場合は、例えば「半期で1億円の売り上げを上げる職務に対して月額100万円の給与」で雇用され、半期の結果が問われるだけになります。結果(職務を達成)を残せば次の雇用契約につながりますが、残せない場合は「クビ」です。
アメリカの映画やドラマに出てくる職場の場面を見ていると、上司に呼ばれて「悪いが今日中にデスクの荷物を片付けておいてくれ。」「明日から来なくていいよ。」ということが良くありますが、こういう事情によるものです。(欧米の場合は「パッケージ」というシステムがあって、解雇する場合は企業が1年位の賃金を保証することがあります。こういう制度もあって解雇でもめることが少ないようです。)

すなわち、「職務給」の場合は結果責任が問われるだけで、日本のような人事評価制度は基本的にはありません。「その仕事ができない人はいらない。」ので評価は必要ないということです。もちろん、「この職務はこういう工夫が必要では。」とは「もう少し、このスキルを身に着けてくれ。」という要望や指導・助言はあるかもしれませんが、いつまでも改善されない場合は厳しい結果が待っていることになります。

さて、今後日本では「雇用の流動化」が進展していきます。いきなり欧米のようなレベルになることは考えられませんが、「職務給」を選択する企業は増えてくると思います。裏返して言えば人事評価制度を持たない企業が増えるということです。「評価」以前の問題として雇用契約が終了するという事態に直面するわけですから、他人に評価されるのではなく、自身で自分を評価し、能力やスキルを自分で高めていくことが問われるということです。
そういう時代に向けて、もう準備を始めなくてはいけませんね。

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