「労働者」を「業務請負業者」と身分を変えさせて仕事をさせる。これこそが「偽装請負」です。「偽装請負」となれば、結局は労働者とみなされるので何も変わりません。 [労務管理]

社会保険料(確かに大きな負担なのですが)を軽減したり、人員の調整をしやすくするために、これまで雇用していた人を「個人事業主」として、その人が担当していた仕事を「業務委託」という形で行わせる事業所があるようですね。

職場を自宅に移し、他社の仕事も請け負う、仕事のやり方(働く時間帯など)は本人任せ、あくまでも仕事の成果物に対して業務委託契約書に基づいて報酬を支払うのであれば「請負」(もちろん、もっと厳密な判断基準がありますのでご注意を)と言えるかもしれません。

しかし、形だけの「請負」で退職前の会社の職場に以前のとおり、上司の指示を受けて決められた時間に「勤務」していれば、これは「偽装請負」とみなされます。

その場合は「委託先の個人事業主」とは言えず、「あなたの会社の労働者」とされます。当然、労働基準法の適用を受ける「労働者」となります。

この問題、その会社で働いている内は顕在化するケースは少ないのですが、「委託契約の解除」という形でその方を事実上「解雇」してしまうとたちまちトラブルに発展します。

「解雇された」といえば「解雇予告手当を支払っていない。」「残業が支払われていない。」など「労働者」としての法律上の権利を主張してきます。「偽装請負」の状態であれば「彼らは業務請負だから、関係ない」が通用しません。

結局は「請負」にしたことが全く無意味なことになります。ですから、安易に「労働者」を「請負業者」に変えるのは絶対にやめてください。

「人件費を軽減したい」、「人員整理を行いたい」こういった悩みは社会保険労務士に是非ご相談ください。
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突然の労働基準監督署の調査。「なぜウチの会社に?」調査には背景があります。あわてず騒がず次のことに注意して対応しましょう。 [労務管理]

自転車に乗ってブルーの作業服を着た男性(もちろん女性の場合もあります)が一人で工場や事務所にやってきて「労働基準監督署です。社長はいらっしゃいますか」といって調査に来ることがあります。

「賃金台帳を見せてください」「労働者名簿はありますか」「タイムカードはどこですか」といって、これらの資料の提出を求めてきます。

「突然やってきた調査に応じる必要があるのか」というご質問がありますが、労働基準法第101条において「労働基準監督官」の「臨検」の権限が規定されていますので、調査に応じる必要があります。(礼状が無く、突然の来社の場合は拒否しても良いという見解もありますが、いずれにしても最終的には調査に応じることになるので、ここでは「突然の調査」に「応じる」、「応じない」については割愛します。)

話をもとに戻しますと、彼らは前述の労務管理上の諸資料の内容を調査し、労働基準法違反や労働安全衛生法違反がないかを確認します。

「時間外労働をしているのに36協定(時間外労働に関する労使協定)が出ていない」「残業をさせているのに残業代が支給されていない」「50人以上いるのに産業医がいない」「健康診断を受けさせていない」「機械の安全カバーが破損しているのに取り替えていない」といった違反があれば、事業主に「是正勧告」を交付されます。

労働基準法や労働安全衛生法は刑罰法規ですから、違反があれば罰則が適用されますが、法の趣旨が「罰を与えること」ではなく「法規を守ってもらう」ことにありますから、「行政指導」という方法で「ここが違反状態ですから、直してくださいね(是正してください)。直してくれたら罰を与えませんよ。」と法の順守を勧めている(勧告)わけです。

ですから、労働基準監督署から調査の申し込みがあったからと言ってあわてる必要はないのです。冷静に調査を受けて求められている資料を提出してください。(もちろん、求められてもいない資料を出す必要はありません。)

「是正勧告」に対して「ご指摘いただいた箇所をこのように、いつまでに改善しました」と報告するのが「是正報告」ですが、これを提出すれば調査は終了ということになります。

したがって、調査において重要なのが改善の着手です。「36協定がでていない」「就業規則が出ていない」については作成して提出すればよいのですが、「〇月に遡って未払いの時間外手当を計算して支払うこと」については金銭が発生しますので頭が痛いところです。こちらについては社会保険労務士と相談して記録が残っているタイムカードの打刻時間が実際の労働時間を表しているかなどを精査して対応することをお勧めします。

「改善期日」までに間に合わないときや、かなり時間を要する課題であるケースもありますので、放置せずに担当の監督官と相談のうえ対応してください。(もちろん、監督官の対応を社会保険労務士にお願いするという方法もありますよ)

いずれにしても、「あわてず、騒がず」が大切です。冷静に対応してください。
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