飲食店で顧客と商談の宝石商営業マン、商談後に商品の一つを置き忘れたことに気づいて戻ったが商品は行方不明。この営業マンの処分は? [労務管理]

何年か前に、顧問先以外の一般の方からタイトルのような相談をいただきました。被害額は80万円と記憶しております。

この営業マンの会社経営者から「懲戒解雇」してよいかと尋ねられました。

本人が悪意を持って盗取し、逃走を図り、警察に捕まって刑事告訴され、それが新聞に掲載され世間で評判になれば労働基準法第20条の「労働者の責めに帰すべき自由」に該当する可能性が極めて高くなり、労働基準監督署長の認定をうけて予告なし(予告手当もなし)で即日解雇することは可能です。会社の就業規則に則り「懲戒解雇」としても正当性は高くなると思います。

しかし、今回のケースは「過失」(不注意)になります。金額からは「重大な」ものに類すると思いますが、これをもって「懲戒解雇」は厳し過ぎると判断される可能性が高いです。(裁判等で争った場合です。)

では、懲戒でない通常の「解雇」はどうでしょう?
①初めての事故か前歴があるか。
②会社側が事故の未然防止のための啓発や教育を行っていたか。
等が判断材料になります。(初めてのミスであったり、会社の未然防止教育が不完全であれば「解雇」は難しいと思います。)

それでは、「解雇」以外の対応ですが、制裁としては「懲戒解雇」「諭旨退社」以外の懲戒処分になるかと思います。(「始末書」は本人から提出させるべきでしょう。)

損害賠償ですが、会社が事故の防止対策(「〇〇円以上は2人以上で営業」「商品管理についての教育実施」など)を講じていなければ全額を本人に負担させるのは妥当性に欠けると考えられます。(この場合は半分程度は会社が負担することも考えられます。)

また、金額が高額であれば一括で賠償するのは困難です。したがって、金銭消費貸借契約を締結(口頭での約束は絶対に避けてください。)して毎月の給与から返済させる必要があります。(退職するときは一括で残金を返済するなどの条文も記載しておくべきです)


いずれにしましても、「従業員のミスは本人の責任」と考えて従業員の処分のみを考えず、「会社の対応に問題はなかったか」と事故を真摯に受け止め、再発防止に向けて対策を講じることに視点を変えて対応してください。
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うつ病と認定され「休職」を申し出た従業員。求めに応じて「休職」を発令をすべきか、あるいは「退職」を進めるべきか。 [労務管理]

ストレス社会を反映してか「うつ病」で体調を崩す従業員が増え、その対応についての事業主の相談が多くなってきています。

「うつ病(あるいは自律神経失調症などの類似の病名)により、3か月の自宅療養を要す」といった診断書を持参し、会社を休ませてほしいという労働者の申し出ですが、対応をどうすれば良いでしょうか。

重要な視点としては、従業員の病気が早く治ることを考えることです。「うつ病」は早期に発見し、治療をすれば治る病気ですから、会社も治癒に向けて協力してあげることはいうまでもありません。

その中でポイントとなるのが「休職期間」です。平均的な期間として6か月とした場合、「3か月の自宅療養」であれば、十分な時間と思い会社が「休職」を発令するのが当然となります。初めての発症で軽度な症状で3か月で治るのであれば、問題ありませんが、過去に病歴があり再発した場合は、「6か月」では困難なケースが多いようです。

この場合、気を付けるのが従業員の病気の治療の視点です。「休職期間6か月、その後病気が改善されず職場復帰できない場合は期間満了時に退職とする。」というのが一般的ですから、求職する側にとって6か月という期限が相当な精神的な負担になるケースが多いようです。したがって、病状が重いと判断した場合は会社として、従業員の了解を得て主治医と面談し、主治医以外の専門医の意見をヒアリングして休職すべきかどうかを判断すべきです。

つまり、休職期間では病状が改善しないと判断した場合は「休職」を発令しないことです。期限という「焦り」は病気の治療にマイナスになりますから、厳しい選択ですがあえて本人の病気回復のために「治療に専念する」ために「退職」を勧める必要があると思います。

重度の「うつ病」は回復に時間がかかります。2年3年と休職期間を設定できる大企業は別ですが、中小企業は長期間の「休職」は困難ですから、本人の治療と回復ためにも「退職」を勧めるべきです。

「失業している」ということも精神的に負担がかかるのではというご意見もありますが、「休職」期間でいたずらに「失業」状態を先のばして、精神的プレッシャーをかけるよりは本人にとって利益があると思います。

いずれにしても、「休職」か「退職勧奨」かの判断は本人の病状を詳しく把握することです。安易な「退職勧奨」はトラブルのもとになりますからご注意ください。
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