戦略的労務管理のすすめ(ちょっと脱線) [品川トピックス]

ちょと本題から離れますね。

先日、あるテレビ番組で長時間労働のため「適用障害」と診断され長期で休職し、最終的に退職せざるを亡くなった女性が会社を訴えるまでの経緯をドキュメントで放送していました。

この会社(IT企業)、入社前に1ヶ月の研修期間があって、その後に雇用契約を交わして実際に労働者として働くということなのですが、その研修期間は雇用契約前だからということで賃金を支払っていませんでした。

また、研修期間中の研修時間、雇用契約後の労働時間は、月当たり270時間(本人の記録した時間が正しければ)に及んでおり、心身の疲労に耐えきれず帰宅後に倒れてしまったようです。

この会社、今やいわゆる「ブラック企業」(個人的にはこの呼び名を否定しておりますが)の烙印を押されてしまっておりますが、労働関係諸法令に関してあまりにも「無知」と言わざるを得ません。人事担当者は何をしていたのでしょうか。「戦略的」労務管理以前の問題です。

まず、研修期間。
採用が決定し、研修の後実際に会社に来て仕事に従事してから初めて雇用関係が成立するということで、研修期間終了後に雇用契約の初日を設定して契約締結していますが、採用に際し必要な研修を会社の指揮命令下において、しかも拘束して行う以上その時点で雇用契約は成立していますから当然賃金を支払う義務が生じます。普通の会社であれば当然行われています。

次に労働時間。
もし彼女が記録している270時間が労働時間と認められると、ほぼ100時間におよぶ時間外労働をしていたことになりますから「適用障害」を発症したことに相当の因果関係があると判断される可能性が極めて高くなります。(女性にとっても、その会社にとっても命を落とさなくてよかったと思います。)
したがって、労災認定される可能性があるのではないでしょうか。(詳細がこれ以上分からないので断定的なことは言えませんが。)
労災が認定されると休職→休職期間満了→退職という流れにはならず、解雇にはできず雇用関係は存続する形になります。

裁判でどうなるの。
当初、女性の弁護士は研修期間の未払い賃金、残業代の請求(2ヶ月ほどなので大きな金額ではなかったのですが)で解決を図ろうしていましたが、会社は「門前払い」しちゃいました。
結局、訴訟となったのですがテレビで流れている情報だけですから、推測の域は出ませんが会社側がかなり不利ですね。(というか丸腰で戦場に向かうようなものです。)

「仕事に慣れるまでは我武者羅に頑張れ」という考え方は否定するものではありませんし、むしろ、そうあるべきだと思います。しかし、限度というものがありますし、いくら法律の範囲内、常識の範囲内といっても個人差がありますので、労働者(特に新入社員)の様子には注意を要するべきです。

真面目な人ほど頑張りすぎて心身を消耗してしまいがちです。労働者を健康な状態で優秀な人材に育て、自社の将来を担ってもらうまでしっかり手綱をしめて管理することも「戦略的」視点です。




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